見なくても遊べるカードゲーム発売へ 視覚障害者と「平等に遊べる」 大学生が開発した理由

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南山大経営学部(名古屋市昭和区)の学生らが、指先の感触でトランプのようなゲームを楽しめるカード「タッチャレ」を開発した。視覚に障害のある人とない人が一緒に遊べる。昨年12月、全国の大学ゼミが商品企画を競うイベントで優勝。イベントに参画した企業が商品化し、今年夏に発売される見通しだ。(小柳津心介、写真も)

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◆点字を知らなくても遊べる工夫

開発したのは、経営学部でマーケティングなどを研究するゼミに所属する、いずれも3年生の田中なつ子さん、中山絵里加さん、市川雄大さん。ゼミは川北真紀子教授が指導している。市川さんが幼い頃に視覚障害者の叔父と一緒に遊ぶことができなかった経験から発案し、昨年8月から作り始めた。

タッチャレを開発した(左から)市川雄大さん、田中なつ子さん、中山絵里加さん=いずれも名古屋市昭和区の南山大で

タッチャレを開発した(左から)市川雄大さん、田中なつ子さん、中山絵里加さん=いずれも名古屋市昭和区の南山大で

 点字を知らなくても遊べるように、カードの表面に「ざらざら」「つるつる」など手触りの違う4種類の紙で作った〇、×、▽、□のマークを貼り付けたのが特徴だ。手触りとマークの組み合わせは、16種類となる。各2枚で、総数は32枚。他にマークのない「ジョーカー」がある。

 指先の感触を頼りに、数人で「ババ抜き」「豚のしっぽ」「カルテット」といったトランプのようなゲームができる。視覚に障害がない人もアイマスクをするなど工夫すれば、視覚障害者と条件は同じだ。タッチャレならではのゲームもできないか研究中という。

◆当事者の声、改良に生かす

 タッチャレは「タッチ」と「チャレンジ」を組み合わせた。31大学の約500人が参加したイベント「Student Innovation College(Sカレ)」で「社会課題を解決する印刷製品」の部門で優勝した。部門のテーマを設定した大阪市の印刷会社「明成孝橋美術」が商品として製造を手がける予定。収益は学生側には入らない仕組みだ。

 田中さんら3人は、開発にあたり愛知県田原市の視覚障害者団体「さくらんぼ」や岡崎市の岡崎盲学校の生徒らに体験してもらい、マークの大きさや位置などを改良してきた。「他の人に頼らずにできるのはうれしい」「平等に遊べる点に魅力を感じた」といった声が寄せられたという。

◆「完成したら、もちろん…」

 市川さんは「完成したら、もちろん叔父と遊びたい。自分たちが作ったもので喜んでくれたら、これ以上になくうれしい」。田中さんは「障害者と実際に一緒に遊んだら、同じように楽しさを共有できた。障害にとらわれず人と人として関われることに、ゲームを通して気付けた」と話す。

 中山さんは「言葉なしで遊べるのもタッチャレの魅力。留学生と協力し、世界中で遊んでもらえるようにできたら」と夢を広げる。

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